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18年ぶりの日本チャンピオンに寄せて

「追及の部 優勝  144番 エックス フォン マインリーベ」
ゼッケン番号と犬名が読み上げられた途端、私の脳裏によぎったのは
「長かった」という思いでした。1989年にアグナール号でチャンピオンを頂いてから1991年にアルノ号、1995年にカッソ号と大変恵まれていましたが、それ以降何度も決勝戦に上げて頂きながらも私の力不足で今一歩及ばず何度も悔しい思いをしました。2008年私の訓練士人生の中で最高と思えるファリルト号でさえ叶わないのならば、再び栄冠を手にする事はできないと思ったりもしました。大会前の練習で足裏を痛めながらも本戦では、けが等なかったように追及する姿を見て言葉にはできない思いがこみ上げて来ました。「哲、(エックスのCNは哲三)頑張れ」心の中で何度も繰り返し祈るような気持ちで作業を見つめていました。
決勝戦では6番目で前5頭の素晴らしい追及作業の後で緊張しましたが、去年の雪辱を何としても果たさなければと自分と「哲三」に言い聞かし強い気持ちで臨みました。「哲三」の持てる力全てをこの2分15秒に込めることが出来たと思います。

私は不器用で自分の気持ちや仕事の事等人に上手く伝える事が苦手で、人付き合いもよくありませんが、今回の優勝にあたり各方面から沢山お祝いのお花を頂き、こんなに喜んで下さる方がおられたのだと知り誠に有り難く今更ながらに私は幸せ者だと感じております。
所有者の河本様の強いご理解、ご支援と「哲三」の強さ、皆さんの応援で押し上げて頂いたチャンピオンだと感謝しています。
今までは、自分には「追及しかない」と思って訓練士として生きてきましたが、これからは自分には「追及がある」と思って粛々と訓練に励み精進して参りたいと思います。振り返ると若い日に頂いた日本チャンピオンは、悩みもなく喜びに溢れてただ享受する事に何の感謝もなかったように思いましたが18年と言う年月が、「人とは、人生とは」と感謝する気持ちを教えてくれたのだと思います。
最後になりましたが本大会開催にあたりご尽力された皆様に心より御礼申し上げ日本警察犬協会の益々のご発展をお祈り申し上げます。